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『桜花裁き』 第三話「至誠一貫」 後編 弐

普段とは違う姿、良いですよね。

大人しい子が感情を顕わにしたり、無表情な子の笑顔だったり。
そんな中でも、高飛車な子自尊心をへし折られる姿というのは、見ていて心が ざわつきます。
可愛いかわいい。なんと弱くて庇護欲をそそられる姿だろうか。

一輪挿しに折れる鮮花のように、不協和芸術性すら感じます。

そんな、桜ちゃんのお話

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襖越しに、近藤局長の「必要ない」という台詞を聞き、耐えきれずにその場を去った桜。
再び自室へと戻ってきてしまいます。

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(なんで、どうして……なんで、どうして……)

頭の中では近藤さんの容赦ない一言が反響する。
自分を信じられず、他人を信じられず、なにもしないという選択を桜に強いてきます。

今回は運が悪かっただけなのに、どうしてこんな。
効率を求め、早期解決を目指したはずだったのに。

きっと、北町奉行 遠山 景虎にも伝わっているはず。合わせる顔がない。
何もできず、ただただ逡巡しているだけで、夕刻を迎えます。

消えてしまいたい とまで思った時、開け放たれる部屋の扉。
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「……こんな所にいたのか。随分と探したぞ」

憮然な顔で部屋に入ってくる紫乃。
対して、今日は何をするか聞いていないと、小さな声で抵抗を見せる桜。

紫乃は「お前の事は、どうでもいい」と、桜の腕を乱暴に掴み、そのまま二人で作戦室まで同行します。
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「町奉行であろう者が、自室に引きこもっているとはな」
当然の叱責。傍らには紫乃、土方、そして涙を流しながら書記を続ける小梅の姿。
そうして、今日一日の報告へと移ります。

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「俺なりに蔵王の屋敷、それから聞き込みと証拠品の再確認をしました」

土方の捜査によると、三日目に桜が見つけた花の簪花柄の箱迫は、出羽の物ではないことが判明。
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理由は明快で、出羽その本人に訊いたから。
事実は別として、自白している以上、出羽が嘘をつく理由はありません。この証言は信用に値します。

次に、紫乃の報告に移ります。
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舶来品の短刀について、あれは確実出羽の物だとわかりました」

こちらは理夢から託された証拠品
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しかし、この短刀では、蔵王の死体状況を作り出すことは不可能
さらに、付着した液体食紅だと判明。

これらの証拠品が意味をなくした以上、牢に入る必要性が無いとして、出羽は釈放

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「つまり、まとめると……どうなるんだ? 小梅君」

近藤さんも酷なことをします。
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何者かが出羽月を協力者に仕立て上げようとしている……ということ、です」

近藤局長が次に指したのは、
それに呆けた顔をしていると、「今日一日何をしていたんだ?」と叱咤を受けます。

朝の会議のことは知らなかった、と弁明しようとしますが、その言葉は遮られることに。
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「俺達は、勝手に捜査しただけだ。お前も勝手に捜査すりゃよかっただろ」と土方。
「調べた物に目を通そうとしないのなら、もう協力はできない」と紫乃。

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「俺達は進撰組だ。お前の部下上司になった覚えはないぞ、遠山君」

これには桜も「なにを勝手な……」と声を上げますが、それも土方によって打ち返されてしまいます。

事実、確かめもせずに偽装の証拠を信じ、無実の人間を死罪に追いやる瀬戸際でした。
物事を冷静に判断する力もない町奉行の指示に従わず、自浄作用として独自に行動した結果、正しい結論へと近づいたことは明らか。

これ以上話しても無駄だと、近藤局長の一声で、今日の所は解散

早く志明が起きないと大変なことになる。
裁きは全て北町に任せればいい。
一日無駄にしてしまった。

当てつけるように話しながら、紫乃と土方は作戦室を後にします。

茫然自失で作戦室を去る桜に、追いかけてきた小梅が声をかけます。
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「桜お姉さま、桜お姉さま!」

今も尚、こうして慕い、励まそうとしてくれている小梅に、桜はただ ただ謝ります。
その声に力はなく、今までになく語勢がありません。

自分の行いによって、事件を間違った方向へ進めてしまったこと、小梅に辛い思いをさせてしまったこと。
全て自分のせいであると、自室へ戻った桜は、ひたすらに己を恥じました。

やがて桜は、思考の泥沼に沈んでいきます。

なぜ周りの人達は、私に意見してくれなかったのか。
どうして手遅れになるまで放っておいたのか。
志明でなければ、相手にしてくれない。
が町奉行にならなければ。じゃなければ。がここにいなければ。

そうして底まで落ちた頃合い、またも自室の扉が開かれます。
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「局長が呼んでる。執務室に来いってよ」

また何かを言われる、否定されることを恐れ、躊躇う桜。
無理やり連れて行きたくはない、という土方の言葉に、どうしようもなく桜は体を起こします。


重い体を引きずり、どうにか執務室を訪れた桜。
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「来てくれたか。ここには俺と君の二人しかいない。好きに喋っていい」

心なしか穏やかな表情の近藤局長。
「私からはなにもありません」と返す桜に、「そろそろ楽になったらどうだ?」と近藤さん。

桜が町奉行代行になってからの、失敗や今置かれている状況
頭の中で考えることと、実際に行うことの違いが、今の桜は痛感しているはず。

近藤さんは、志明という町奉行を少なくとも一年間見てきています。
父親譲りの考え方で、人情を以て裁きを行ってきた志明。それはある一つの、正しい答えへの道。

対して、桜の父親である遠山景虎が執り仕切る北町は、冷静で簡潔な考え方を以て裁きを行います。
桜もきっと、そうした冷静な切り口で物事を判断すると思っていましたが、実際のところは、お話にならない視野の狭さ

自分が町奉行の器ではないと分かったのではないか、と問う近藤さん。

幼少の頃から景虎の下、鍛錬し、努力し、我慢し、励んできた桜。
中町奉行所の候補として選んでくれた人がいる以上、それは認められないと返します。

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「選んでくれた? ……ああ、あれか。奉行所が新設された時の話か」
苦笑いをする近藤さん。

中町奉行所の新設にあたって、新選組局長である近藤 尊、北町奉行である遠山 景虎、そして志明の父である南町奉行大岡 忠茂の三名により、それぞれ候補が挙げられました。

誰が誰を挙げたかは伏せられていましたが、景虎は桜を、忠茂と近藤局長は志明を、と誰もが考えていました。

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「お前の父、景虎は恐らくこうなるのを見抜いていたんだろうな」

近藤さんの言葉に、困惑する桜。
しかし、最も知りたくない事実が、桜に伝えられます。

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景虎は、お前を町奉行の候補に挙げてはいない

「---え?」
桜の口から言葉が漏れる。

遠山景虎が選んだのは、大岡志明。そして近藤さんも志明を選び、彼は晴れて町奉行に就任
自尊心が高い桜を、可哀想だと思った忠茂が選び、彼女は今ここに目付として就いたのでした。

同情心で選ばれ、期待されない中で頑張り、父からさえも見放されていた。
「………………うそ」
その事実が明かされた今、その自尊心を欠片もなく砕かれる桜。

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「そもそも君は、もう少し周囲の人間の声に耳を傾けるべきだ」

頭は真っ白になり、何を言われているかも分からない。何も聞こえない。
胸が苦しい。息ができない。もう、嫌だ。ここにいたくない。
私は町奉行なんかに。

「遠山君……どこへ行く、戻れ!」
近藤さんの制止も聞かず、執務室を飛び出す桜。



相談するあてもなく、気持ちを吐き出すも無い。
それを不要だと言い、遠ざけ、排他してきたのは、他ならぬ桜本人。

必要なのは、町奉行としての思考武技だけだったはず。
自分には それすらも無いと分かってしまった今、そこに残されたもの。
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"誰にも相談できない、自尊心の強いただの阿呆だ"

「…………もう……遅いか……」

人が人を求めるのは、一人では生きていけないから。桜はそれに気付きます。
周りに見放された自分
一人では生きていけない自分

助けを求めて、当て所なく彷徨う桜。
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"……気がついたら、ここにいた"

そこは療養所。未だ目を覚まさない志明の隣に、桜は腰を下ろす。
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「どうしてこんな時に寝ていられるんだ? いい加減、起きろ……」

そこには悪意も嫌味もなく、ただ自分の気持ちを吐き出しぶつけるだけ。
意気も無く、そこに眠っているだけの志明に向けて。

「お前の代わりを一日だけやった。だが、駄目だった。私には無理だった……」

志明のことをあれだけ貶していたのに、自分勝手の末に、誰からも信頼されなくなった。
それでも、志明だけは、そんなの話に耳を傾けてくれると信じて。

「……私が……間違っていた……」

他人の言葉に耳を傾け、信用するべきだった。

桜の口から苦笑が漏れる。
以前の自分にそんなこと出来るはずがない。
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「なんで寝てる! 起きろ! お前のせいで、お前のせいで……」

湛えた涙が、ついに零れ落ちる。

今まで、人の気持ちなど歯牙にもかけなかった桜。
それが自分の身になり、ようやくその必要性を知ります。
しかし、今気づいたところで もう手遅れであることも、桜には分かっていました。

「私には無理だったんだ。だから……助けてくれ…………お願いだ……」

自分が全て間違っていたことを認め、それが覆らないことも認め、それでも話せるのは志明だけだと、助けを求める桜。

自分はここに居るのに、とっくに見放され、今や誰からも必要とされない。
未だ眠っているのに、期待され、たくさんの人から求められている志明。

「どうすればいいかなんて……もうわからない……わからないんだ……」

進む道戻る道もなく、道しるべもない。
拠り所は不確かで、立つ瀬さえも曖昧。
桜はもう、自分の足で立つことさえも出来なくなっていました。

「……誰か、助けて………………」
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「わかったよ! あたしが助けてあげる!」

「……っ!? 誰だっ……!」



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「やっほー。言いたいこと言ったら、楽になったっしょ?」

「あ……ががが……」

一服の清涼剤こと平賀 理夢! 流れる音楽も一気に日常感あふれるものに!
桜ちゃんから何かが壊れる音がしましたが、彼女は一流のからくり技師修理は問題ないでしょう。
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「ごめん、全部聞いてた」

全部聞いてましたよ!
志明くんの看病をしいてましたから、療養所に居ますよね、そりゃあ。

「…………ふふ、べつにもう……どうでもいいことだ」
既に精神を折られまくっている桜にとって、これくらいの折れは、折れと呼べません。
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「しかも、あたし一人じゃなくてー……」

あたし一人じゃないってよ!

「…………え?」
これには桜も動揺

「おうっ! 助けてくれと言われたら、助けてやるに決まってる!」
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「……まぁ、手を貸してくれと言われれば……手を貸す」
土方! 紫乃

「桜お姉さま……そんな気持ちをずっと抱えてたんですね……」
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小梅

「小梅……」と感動したような声を出す桜。
「いや、待て……偶然だとしてもここにみんな居るのはおかしいだろ!」
そういうところは冷静ですね。

「ふっ……やっと気づいたか。まだまだだな!」
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「局長が仕組んだ」
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「あたしは今日の夕方に聞かされたんだけど、桜ちゃんに大切なことを教えるためだって」
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「わたしは、今さっき知りました……だから、もう辛くって辛くって……あうぅぅ……」
天使


「……昨日、今日はわざとやっていたのか?」と桜。

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「すまんかった」
「すまなかった」
こいつらいい表情するわ!

「お、お前らな……」と戸惑いながらも呆れる桜。

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に集められる視線。
「……いい。やっとわかった。大岡や近藤殿が、私に何を言いたいのか」

それは以前までのものとは違い、柔らかな視線。
「今まですまなかった。だから……力を貸してくれ」

一人の仲間に対する、信頼の眼差し。
「一人の考えではなにもできない……みんなの助けが必要だ」

土方が問う。
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「それは命令か? それとも、頼み事か?」


「……もちろん、頼み事。願いだ」


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「任せろ。頼みなら、全力で期待に応えてやるぜ」


と言ったところで、紫乃から撤収の提案。
療養所ですからね、ここ。

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「志明くんの今日の夢は、桜ちゃんの泣き顔だろーなー」

「……絶対に大岡には言うなよ! 絶対だぞ!」

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「どーしよっかなー? 桜ちゃんがまた同じようになったら……わっかんないなー」

「約束する! 絶対にもう、みんなを裏切らないから! だから、後生だっ!」

笑ってしまう雰囲気ではありますが、桜が皆を信頼し、信用することと、素の一面を見せている大事な場面。

最初からこうすれば良かったんだと気付く桜。
自分一人で抱え込む必要もなければ、完璧である必要もない。
間違った時には謝る。そして皆を頼り、逆に頼られれば全力で応える。

"私に必要だったのは、実力でも、絶対的な正義でも、権力でもなかった"
"素直さと、仲間だったんだ……"


町奉行とは、裁くためだけではない。
どのような意義があるのか、それはまだ桜にはわかりません。
ただ、この事件が終われば、わかる気がしていました。


それから、人一倍 心配をかけた小梅に改めて謝罪する桜。
「わたしはもうどうにかなりそうで……」と涙ぐむ小梅。

そして、向き合う桜と理夢。
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「……心、軽くなった?」

「ああ……なんだか、軽くなったよ」

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